すっかり夜は冷え込むようになりました。
近頃は、ひでしな商店の事務室もストーブに火を入れて、暖をとりながらの営業です。
先日、民家再生協会のイベントに参加してきました。
会場は、川崎市にある日本民家園。
東日本の古民家を中心に収集、移築した野外博物館です。
園内では、
セミナーでは、民家園の移築、再生に携わられた建築史家の安田徹也さんと一緒に
園内をめぐり、解説していただきました。
私自身、こんなにたくさんの種類の古民家を一気に見たことがなく、大興奮しながら、
じっくり園内を見学。そして、安田さんの解説をお聞きし、古民家に関する見識を深めました。
昔の人の工夫や、意匠、そして生活、、、その全てが研ぎすまされている印象でした。
粋でカッコいい、、、古民家に対する尊敬の念がまた一段と強くなりました。
最初に見学した野原家は、富山県の合掌造りのお家です。
さぞ、寒いところに建っていただろうに、外壁は板と障子です。
雪がつもる地域の民家は、土壁だと雪で痛んでしまうので、板壁なんだそうです。
見るからに寒そう、、、。
しかし雪囲いをして冬支度をする家とのこと。
そうか、家ごと冬服を着ている感じなのですね。
気密性は目をつぶるとしても、冷たいガラス窓の側よりもひょっとすると
寒気が弱いかもしれないですね。
園内では、他の建物の雪囲いの支度が始まっていました。
野原家でもう一つ特徴的だったのは、普通は床の間がある位置に仏壇があった点。
浄土真宗のお宅だったそうで、一番大事な場所に一番大事な仏様を配置したようです。
家の人の価値観が民家から確認できる、面白いケースでした。
次は、梁の組み方に特徴のあるお宅をご紹介します。
こちらは、千葉県で現存している最古の民家、作田家の梁です。
1600年代の終わり頃の建物。
この踊るようにうねる梁をあじろに組んでいます。
ついつい長い間見ほれてしまいます。
クレーンも、高性能なジャッキもない人力勝負の時代にこんな技が可能だったのか。
安田さんの話では、全く合理的な組み方では無いそうで、、、。
粋すぎる、、、。
そして次の民家も個人的にびっくりした造りのお宅でした。
目からウロコが落ちました。
こちらは山梨の甲州市に建っていた広瀬家。
17世紀末のお家です。
山からの風を防ぐために軒が低くなっており、
背の高い方は家に入る前に一度かがむ形になりそう。
入り口からユニークですが、内側がまた面白い。
みなさん、床って冬は冷たいイメージないですか?
伝わりづらいかもしれませんが、このゴザ、床の上にそのまま敷かれています。
その名も「土座(どざ)」という名前。
なんでも土の上にそのまま直に藁を敷くと暖かいんだそう!
ただ、夏はとても蒸すそうで、藁は毎年換えるとのこと。
いや、しかし床の上で火を囲んで暖をとっていたとは、、、!驚きの一軒でした。
こちらの家は外壁もまた味があります。
写真は広瀬家の裏手の外壁です。
この住宅は四方が壁だらけで、室内は、じつはとても暗いのです。
建具が取り付けられているところがほとんどありません。
安田さんのお話を伺ったところ、古い民家ほど、閉鎖的な造りだったそうです。
当店でも、在庫でいうとかなりの数を保有している建具。
なんでも、建具は加工精度が高くないと使い物にならないので、その筋のプロのお仕事の高級品。
当時は値段も高く、一般の民家に流通していなかったそうなのです。
土壁が素敵だなーと最初は、茶室を見るような目線でこちらのお宅を見ていましたが、
当時の生活は家の中が暗く、出来る仕事も少なかったのだろうな、
土の上だとお尻も痛かっただろうな、、とかなり見方が変わりました。
こちらの川崎市立日本民家園は何と言っても色々な種類の家が見学できるのが魅力でした。
普段なかなか出会うことのない、その地域の土着感を味わえる一般の民家に入り、
その生活を想像できたことが何よりの収穫でした。
日本民家園は、小田急線の向ヶ丘遊園駅が最寄り駅です。
都心からそれほどアクセスも悪くありません。
民家の魅力は確実にこちらで味わえる!と自信をもって太鼓判が押せる博物館でした。
ご興味のある方、ぜひ一度足をお運びください。